そこで私、常盤 美空(ときわ みそら)は長い髪をひとつにまとめ、医療事務員として働いている。

中学一年生の時、両親が離婚。

母に引き取られて四年後の高校二年生時、職場の上司と再婚し私には四つ下の弟ができた。

難しい年頃にもかかわらず、弟の圭(けい)は私に懐いてくれて、すぐに意気投合した。

新しいお父さんも優しくて、休日は家族サービスを怠らない人だった。


あぁ、やっと私にも幸せが訪れたんだ。あれだけ辛い想いをしてきたのだから、楽しくて幸せな毎日なはず。そう信じていたんだけれど……そんな日々は、たった一年間だけだった。


私が高校三年生の進路について考え始めた夏休み前、遅くなった新婚旅行に出かけた両親は、旅先で交通事故に巻き込まれ亡くなった。


その知らせを聞いたのは高校の授業中で、なにかの間違いだとすぐに信じることができなかった。

けれど叔母さんが学校に迎えに来てくれて、圭といっしょに三人で両親の旅行先に向かい、病院で遺体と対面して。

変わり果てた両親を前に、圭と大泣きしたのを今でもよく覚えている。