復讐劇は苦い恋の味

突然の事故で亡くしたって。私と同じだったんだと思うと胸が痛んだ。


「それまではさ、父さんの会社を継ぐって漠然としか考えられずにいたんだ。心のどこかでまだ先だって思っていたんだと思う。……でも父さんが突然亡くなって、一気に後継者問題が勃発してさ。……当時は本当、色々と大変だった」

そう話す君嶋くんの瞳は当時のことを思い出したのか、大きく揺れている。


「突然の重圧に押し潰されそうだったよ。毎日が辛かった。……だからその、あの頃はどこかにはけ口を求めていたんだと思う」

急にしどろもどろになり出した彼。そんな彼に思い切って尋ねた。

「じゃあやっぱり彼女がいたの? ……ずっと恋愛できなかったっていうのは嘘だったの?」

もし嘘をつかれていたとしたらショックだ。

けれど彼はすぐに否定した。

「違う! 嘘じゃない。ずっと恋愛できずにいたよ、彼女だっていなかった」

矛盾する答えに頭の中は混乱してしまう。

「え……じゃあどういうことなの? 永田くんたちが言っていたことは違うってこと?」