復讐劇は苦い恋の味

「えっと……美空の聞きたいことちゃんとわかっているから。とりあえず車に戻ろう」

「……うん」

本当は今すぐ聞きたい。彼女がいたってどういうこと? 私に嘘をついたの?って。

けれどここは駅前の飲食店街。周囲にはたくさんの人がいる。

聞きたい気持ちを抑え、近くのコインパーキングへ向かった。

「えっと……とりあえず車出してもいいかな?」

「うん」

車に乗り込むと、私の様子を窺いながら聞いてきた君嶋くん。

いつもと違いよそよそしくてぶっきらぼうに返事をしてしまう。

ゆっくりと動き出した車。支払いを済ませて大通りに出たところで君嶋くんは、重い口を開いた。

「さっきの話だけど……」

運転する彼の横顔を見ると表情は強張っている。

やっぱり君嶋くんが前に私に話してくれたのは、嘘だったのかな。

そんな予感が頭をよぎった時、彼はゆっくりと話し出した。

「父さんが亡くなったのは、俺が二十歳の時だって話したっけ?」

「……うん、聞いたよ」