復讐劇は苦い恋の味

けれど小心者の私は俯いたまま、騒がしさに気づいた先生が止めに来るまでなにも言えずにいた。

その日からだ、私の地獄の日々がはじまったのは。


* * *


「忘れたいのに忘れられないくらい、辛い毎日だった。……不登校になっちゃって、そのせいで両親は喧嘩ばかり。離婚の引き金を引いたのは私のせいだった」

「そんな……」

朋子に話せたのは、辛い日々のほんの少しだけ。とてもじゃないけれど、すべてを話せそうにない。それほど嫌な思いをさせられたから。

すっかりお互いの箸を持つ手は止まっていた。朋子は私になんて声をかけたらいいのか、困っている。

そんな彼女の姿に慌てて笑顔を取り繕う。


「でも離婚を機に引っ越しすることができて、新しい学校ではいじめられることもなかったの。それに自分が変わらないとって気持ちになれて、ダイエットできたし。圭とも姉弟になれて、高校では朋子やみんなとも出会えた。だから悪いことばかりじゃなかったよ」


そう、これまでの私の人生は悪いことばかりではなかった。

両親は離婚してしまったけれど、元々お互い仕事ばかりで家にいなくて、本当の家族って感じじゃなかった。