「たまたまお店の前で会ったんです。最近会えていなかったので、強引に食事にお誘いしてしまいました」

『はぁ?』

君嶋くん、大丈夫かな? 圭を余計に怒らせているようにしか思えない。

けれど私には事の経緯を見守ることしかできない。


「今度今日のお詫びも兼ねて、ゆっくりとご挨拶させてください。お姉さんのことは食事後、しっかりとご自宅までお届けするのでご安心を。――では」

『おい、待てよっ……!』

一方的に言うと君嶋くんは圭の話を聞くことなく電話を切った。

そして小さな溜息をひとつ零すと、困った顔で私を見据えた。

「どうやら美空と本当の意味で付き合えるのは、弟さんを攻略してからのようだな」

苦笑いする彼に思わず笑ってしまった。



それでも私はこの先もずっと君嶋くんと一緒にいられると思った。

だって私たちの恋のはじまりはとびきり苦くて苦しくて、決して楽なものではなかったから。

この先はきっと甘くて幸せな毎日が待っているはず。そう信じたい。