すると見えてきたのは見覚えのある車。

助手席の前で立ち止まると君嶋くんはここでやっと私の肩から手を離した。

そして私と向き合うように立つと、真剣な瞳が私を射貫く。


聞きたいことがたくさんある。そして伝えたいことも。けれどいざこうして君嶋くんを前にすると、頭の中が真っ白になる。

静かなコインパーキングで見つめ合うこと数秒。君嶋くんは困ったように眉尻を下げた。


「ごめん、話したいことはたくさんあるのに、美空ちゃんを前にするとなにから話せばいいのか、わからなくなる」

そう言うと君嶋くんは車の施錠を解除した。

「でもちゃんと話したいんだ。……最後まで話しを聞いてほしい」

いつになく真剣な瞳を向けられ、息を呑む。

私も聞きたい。君嶋くんの話をすべて。

高鳴る鼓動を押さえながら頷くと、君嶋くんは安心したように表情を緩めた。

「乗って。ここやお店だと落ち着いて話せないし、車の中でさせてほしい」

「……うん」