金曜日の夜。駅へと続く歩道にはたくさんの人が行き交っている。

そんな中、肩を抱かれたまま進んでいると、道行く人はチラチラと視線を向けてくる。

けれど君嶋くんは気にした様子を見せることなく突き進んでいく。


道中何度も君嶋くんの横顔を見るも、彼は真っ直ぐ前を見据えたままで、今何を考えていて、どんな気持ちでいるのか計り知れない。

君嶋くんが言っていたことは本当なの? 知っていて私を好きになっただなんて。

もしかして君嶋くん、私のことが嫌いだから気づかないフリをしてお見合い話を持ちかけてきたの?

さっき庇ってくれたのはフェイクで、今からすべて打ち明けて私が傷つく顔を見て笑うつもりとか?

そんな残酷なことが頭をかすめるも、すぐに思い改まる。

ううん、違うよね。君嶋くんはそんな人じゃない。彼は変わったはず。そう信じたい。

その想いを胸に彼と歩を進めていくと、君嶋くんは駅前のコインパーキングへと向かった。