雑誌やテレビなどによく取り上げられている日本料理店。

歴史を感じさせられる趣のある店構え。

案内されたのは、立派な日本庭園を眺められる個室。

「失礼いたします、お連れ様がお見えになりました」

扉の先に見えた人物。

「初めまして」


私を見て〝初めまして〟と言ったのは忘れたくても忘れられない、二度と会いたくない人だった。

十年以上経って久しぶりに会ったけれど、彼だって確信を持てる。

二重のキリッとした右の目元ほくろ、それは彼を象徴する特徴だったから――。


* * *


週明けの月曜日。私の勤め先である総合病院には、予約患者数だけで千人以上。

午前中の会計窓口は戦場と化している。

「お待たせいたしました。会計の準備が終わりましたら番号が出ますので、お会計お願いいたします。――次にお待ちの方、どうぞ」

高校を卒業後、資格を取得し就職した先は家の近所にある医療設備が整った大きな総合病院である、佐々木総合病院。