君嶋くんの服は赤く黒ずんでいる。

いくら大事には至らなかったとはいえ、怪我をさせてしまったことに変わりない。

「本当にごめんね。巻き込んで怪我までさせちゃって……」

何度謝っても足りないよ。

唇をギュッと噛みしめると、君嶋くんは右手で私の身体をそっと抱き寄せた。

「え……あ、君嶋くん?」

突然の抱擁に戸惑う。

躊躇いがちに抱き寄せられた身体。顔を上げると彼と視線がかち合う。

「謝らないでよ。……好きな子に怪我をさせることなく守れたんだ、本望だよ」

「君嶋くん……」

そう言って目を細め愛しそうに見つめられ、身体中の熱が上昇していく。

見つめ合うこと数秒、ゴホンと咳払いが聞こえてきた。

ハッとし咳払いが聞こえてきた方を見ると、警察の人が二名気まずそうに立っていた。

「すみません、当時の状況をお聞かせ願えればと思いまして……。少々お時間、よろしいでしょうか?」

そうだよね、話さないとだよね。そうわかっているけれど、思い出すといまだに怖くなる。