復讐劇は苦い恋の味

ちょっと待って、あの人……!

瞬時に蘇る先週の出来事。

予想することさえできなかった。

だってまさか患者だった彼に、あんな強引に連れて行かれそうになるなんて、誰も思わないはず。

どこにでもいるような物腰の柔らかそうな男性だったから。

なのに今は別人のように目を赤く充血させ、鬼のような形相をしている。

突然の出来事に私と君嶋くんも呆然と立ち尽くしてしまう。

けれど男性が近づいてきた瞬間、目に飛び込んできたものは手にしている鋭いナイフ。

「美空ちゃんっ……!」

君嶋くんは急いで私の身体を抱き寄せた。

次の瞬間、強く抱きしめられる身体。

なにが起こったのかわからない。でも次に君嶋くんの苦しそうな声が聞こえてきた。

「君嶋くん!?」

私を抱きしめる腕の力が弱まりすぐに離れ彼を見ると、君嶋くんは顔を歪め右手で左腕を押さえていた。

嘘、やだまさか……!

「君嶋くん!!」