復讐劇は苦い恋の味

バツが悪そうに顔をしかめる君嶋くんに、すぐに声を上げた。

「忙しいのにこうして迎えに来てくれて本当にありがとう。……君嶋くんこそお仕事お疲れ様」

「美空ちゃん……」

いつも遅くまで仕事しているのを知っている。だからこそ申し訳なく思うと同時に嬉しいの。

そんな合間を縫って迎えに来てくれて、食事に誘ってくれたことが。

向き合ったままどちらからともなく照れ臭くなり、笑ってしまう。

けれど同僚たちの視線を感じハッとした。

そうだった、ここはまだ病院。ちょうど退社する病院職員が多い時間帯だ。

せっかく噂が収まってきたのに、君嶋くんと一緒にいるところを大勢の人に見られたら、また噂されてしまいそうだ。

「君嶋くん、お腹空かない? 早く食事に行こう」

「あ、あぁ」

咄嗟に彼の手を掴み歩き出した。早くこの場から去りたい一心で。

けれど数メートル進んだところですぐに気づく。今、自分が君嶋くんの手を掴み歩いていることに。

足を止め、慌てて彼の手を離した。