復讐劇は苦い恋の味

まだ数名が残る控室で彼女が出ていったドアを見つめたまま、手は触れられた肩に向かう。

「お疲れ様でした」

「あ、お疲れ様でした」

残っていた同僚も次々と上がっていき、私もロッカーのカギを閉め控室を後にした。

廊下を歩く病院関係者と一緒に、私も職員専用の出入り口へ向かっていく。

私だって君嶋くんのこと、忘れることができたらって思うよ。むしろ彼だって気づかずに再会したかった。

お互い知らずに初対面だと勘違いしてお見合いして、そして今のような関係を築けていたらって。

そうしたら私、君嶋くんのことが大好きになって必死に恋していると思う。

ちょっとしたことが嬉しくて、たまらなく幸せを感じられていたはず。


いっそのこと過去のことなんてすべて忘れることができたらいいのに。今の君嶋くんしか知らなければ、なにに悩むこともなく私は彼のことが好きになれた。

惹かれているのに好きだって認めたくなくて、臆病になることも不安になることもないのに。

でも、もしかしたら彼だって気づいたからこそ、こんなにも惹かれているのかもしれない。