「姉ちゃんさ、俺にあいつの話をしてくれた時のこと覚えていないの? ……泣きながら苦しそう話す姿を俺は見ていられなかったよ。それほど酷いことをされたのに、どうしてそんな奴に本当のことを言えず、ズルズルと会いたくなるほど惹かれちゃっているわけ?」


「それは……」

言葉が続かない。

圭の言う通り、私は君嶋くんに酷いことをされて、それを今も鮮明に覚えているほどトラウマとなり、恋愛に臆病になるばかりだった。

それなのにその元凶の人が気になるだなんて本当……バカだよね、私。

なにも言えずにいると圭は私の顔を覗き込んできた。


「わっ! なに? びっくりしたんだけど」

驚き後ろにのけ反る。けれど圭はジッと私の瞳を捕らえたまま。

「でもそれほど嫌いだった相手なのに、姉ちゃんが惹かれちゃうってことはさ、あいつ……昔とは別人みたいに変わっちゃっていたわけ?」

昔から勘のいい子だと思っていたけど、圭は鋭いな。

目を丸くさせながらも、私は朋子と圭にだけは嘘がつけないなと実感させられると、つい口元が緩んだ。