坊主だったのに、今ではサラサラの黒髪をきっちりワックスでセットされていて、汚いユニホームを着ていたのにスーツをかっこよく着こなし、デキる男に成長した。


月明かりに照らされた圭は、弟ながらドキッとしてしまうほどカッコイイ。そう感じるのは久し振りに会うからかな。

そんなことを考えていると、いきなり両頬を抓られた。

「いひゃ……っ」

声を上げるも、圭は両手で私の頬を掴んだまま離してくれない。

「へい……?」

うまくしゃべれず、圭と呼べない。なのに圭は私の頬を掴んだままニッコリ微笑んだ。


「どれ、警戒心ゼロの姉ちゃんが弟の俺に内緒でどんな相手と見合いしたのか、じっくり聞かせてもらおうじゃねぇか。……まさかさっきの野郎みたいな変な奴とか言わねぇよな?」

笑顔が逆に怖くて、さっきとは違った恐怖心を覚える。

圭は私にとってたったひとりの大切な家族。……のはず。

「……はひ」

頬を掴まれたまま返事をすると、圭は満足気に笑った。

「じゃあとっとと帰るぞ。腹減ったからなんか作って」

痛む頬を押さえながら、先に歩き出した圭の後を追うものの……。帰ってからのことを考えると、気が重くなるばかりだった。