復讐劇は苦い恋の味

お見合いを引き受けたのも、ただの気まぐれかもしれない。

だったら顔なんて見ない方がいい。一度しか会わない人なのだから。

そう自分に言い聞かせ、お見合い写真は部屋のクローゼットの奥にしまった。

土曜日は美味しい料理を食べに行くだけ。失礼がないようにだけは気をつけようと心の中で何度も唱えて。



* * *


そして迎えた土曜日。叔母さんと向かった先で待っていたのは彼だった。

忘れるわけもない。……ううん、忘れることなんてできなかった。

どうして彼がここに? 本当に彼がお見合い相手なの?

先に部屋に入った叔母さんは、立ち尽くす私に声をかけた。

「美空ちゃん? どうかした?」

「あっ……いいえ」

バクバクと高鳴る心臓。震える足でどうにか部屋の中央へと進む。

和室で部屋の中央にテーブルが置かれており、叔母さんは彼と向き合う形で腰を下ろした。

恐る恐る叔母さんの隣に座り、チラッと彼を見れば目が合う。

すると彼はふわりと微笑んだ。

なに、その顔――。初めて見る彼の表情に動揺を隠せない。