姿が見えなくなりホッとしたのも束の間、痛いほど感じる視線。

恐る恐る顔を上げると、圭は呆れた目で私を見つめていた。

「あ……えっと、おかえり、圭」

ゆっくりと掴んでいた彼の腕を離し、白々しく『おかえり』なんて言ったけれど、彼は眉間に皺を寄せた。

あ、これはくる……! そう覚悟を決めた次の瞬間、圭はくどくどと文句を言い出した。


「叔母さんから姉ちゃんが見合いしたって聞いて、俺がどれだけ驚いたかわかる? 仕事どころじゃなくなって予定前倒しで帰ってきたら、変な男に引っかかっていて、連れ去られそうになっているし。え、まさかあの変態ストーカー野郎が姉ちゃんの見合い相手じゃないよね?」

疑いめいた目で見てきた圭に、慌てて否定した。

「そんなわけないじゃない!」

「じゃああいつはなんなの? どうしてあぁなったの!?」

間髪入れず聞いてきた圭に、言葉を濁しながらも説明していった。

「あの人は患者さんで……! 具合悪そうで声を掛けたら、そのまま入院になったみたいで……。昨日、病院内の売店で偶然会ってお礼を言われて、明日退院するって聞いただけなんだけど……」