復讐劇は苦い恋の味

驚き声を上げると、男性は足を止め私の腕を掴む力を強めた。

「痛っ……」

痛みに顔を歪める私に、男性は目を吊し上げ叫んだ。

「どういうこと!? 俺という相手がいるのにこの男はなに!?」

すごい剣幕に息を呑む。


この人はなにを言っているの? 彼と私はただの病院職員と患者という関係。特別な関係なんてない。まともに話したことすらないのに。

するとそれを聞いた圭は表情を歪めた。

「は? 俺という相手がいる? なにそれ、意味がわからないんだけど。つーかお前こそ誰だよ!」

いつになく厳しい口調の圭に、男性は一瞬たじろいだ。

その隙を逃がさず私は男性に掴まれた腕を大きく振り払い、急いで圭の元へ駆け寄った。

「圭っ……!」

怖くて必死に圭の腕にしがみつく。

そんな私を圭は男性から守るように前に立った。

「どこの誰だか知らねぇけど、二度とこいつに近づくな。今度こんなことしたら警察に通報するから」

声を荒げて言うと男性は悔しそうに唇を噛みしめ、逃げるように去っていった。