「どうしたもなにも、あんたは愛想振りまきすぎ! あの人、絶対美空に惚れちゃっているでしょ!」

「…………まさか」

嘘のような話にワンテンポ遅れて言うと、朋子は「甘い!」と言い人差し指を立てて力説した。

「あんたあの人の顔をちゃんと見た!? もう美空が好きです!! 顔していたじゃない!」

好きです顔っって……。変なことを言い出した朋子に溜息を零す。


「そんなわけないじゃない。私はただ、事務員として当然のことをしたまでよ。それに朋子だって具合悪そうな患者さんがいたら、声を掛けるでしょ?」

「それはそうだけど……」

言葉を詰まらせる朋子。けれどすぐにまた反論した。

「美空は自分が思っている以上に可愛いんだからね! 弱っているところであんたみたいなかわい子ちゃんに優しくされちゃったら、誰だってコロッと惚れちゃうわよ」

「そんな、やめてよ」

そんなわけないじゃない。それに患者さんに声を掛けるのは、これが初めてではない。これまでに何度もあった。

けれど声を掛けた患者さんに言い寄られることなんて、一度もなかったもの。

お弁当を取り出し、手を合わせて食べ始める。