「ありがとうございます」

その様子を隣で見ていた朋子は肘で私の身体を小さく突いてきた。

「美空、早く行こう。お昼食べないと」

「あ、うん」

そう言うとなぜか私の腕を引き歩き出した朋子。

「あっ……」

なにか言いたそうにする男性を残し、なにも買わずに売店を後にした。

「え、ちょっと朋子? お昼ご飯買わなくていいの?」

そのために来たのに。

「いいの! ちょっと高いけど食堂で食べればいいし」

腕を引かれたまま着いた食堂。十三時を過ぎるとピーク時は超え、席はたくさん空いていた。

周囲に人がいない場所を選ぶと、朋子は注文しにいかず腰を下ろした。

「朋子、注文は?」

私も腰を下ろし尋ねると、彼女は訝し気に私を見る。

「ねぇ、さっきの誰? 知り合いなの?」

「知り合いもなにも患者さんだよ。ほら、先週話したでしょ? ロビーで声をかけた患者さんが、入院することになったって。それが今の人だよ」

先週した説明を繰り返す私を、なぜか彼女は険しい表情で見る。

「え、なによ。どうしたの?」