「桃ー?ちゃんと聞いてるー?」
「……え?あ、ごめん聞いてなかった。」
「どうしたの桃?ぼーっとして。」
「ううん!何でもない!大丈夫だよ!」
私は腕を上下させ大丈夫とアピールする。
ここは学校の教室?夕日のせいか教室が淡く暖かい朱色に包まれてるので、あまり現実感がない。
話しかけて来ている、背がちっちゃくてボブがトレンドらしい、おっちょこちょいで天然な性格?ふわふわ天使みたいなこの子は、秋山紅葉。本人曰くおっちょこちょいで天然はきゃらずくり?だそうだ。
「?まぁいいか?それより桃ー。— — —」
「え?何?聞こえないよ?」
「だからー、— — —」
どうしたんだろ?耳が悪くなったの?
そう考えていると、教室が二重、三重にぶれて見え出した。
「え?」
景色が切り替わった?
学校の屋上になってる。
周りには紅葉がいるだけ。
いや、もう1人いる。というか紅葉がもう1人の人と何か話をしているみたい。
私とは距離があるから話の内容はあまり聞こえない。
盗み聞きするつもりはないが、何となく気になったから近寄る。気になるものは仕方ないよね!
「どうして俺と付き合えないんだよ!」
「え?だって、私、付き合うとかよく分からないし……。」
普段の紅葉見てるからぶりっ子しているのがよくわかるな。そしてこれは告白の現場ってやつだな。
「分からないなら俺が教えてやるよ!試しに付き合ってみよう。」
「普通に遊んだり話したりするだけじゃダメなの?」
紅葉はやんわりと断ってるなぁ。
「俺だけのものにしたいんだ!」
ふぅー。男子が紅葉を抱きしめた。
「いやっ。やめて!」
紅葉は男子を剥がし、怯えた目で見る。
「こっちが甘い言葉頑張ってかけてやってんだからなびけよー!」
えー!!!なにそのキレかたー!ありえなくない!?ばかなの!?
すると男子はポケットからカッターを出した。
「ふふ。俺のものにならないなら……。うわぁぁぁ!」
雄叫びをあげ紅葉に切りつけようとする。
「あぶない!」
私は咄嗟に紅葉を突き飛ばした。
「いたっ。」
紅葉がコケた痛みを訴えて私の方を見る。
紅葉が驚いたような顔をしている。
「桃!右手!」
「自分の状況ぐらいわかってるよー。」
紅葉を安心させようとなるべく笑顔で答えた。
男子が持っていたカッターは、私の右腕を切り裂いていた。
痛いには痛いのだが我慢できないほどじゃない。
男子の方に目を向ける。
男子は怯えたように、カッターを手放し、後ずさる。
「あんた振られたからって逆恨みして相手を殺そうとするなんて馬鹿なの!?」
切りつけられた部分を抑えながら言う。
「そんな……。俺は。」
ぶつぶつ何か言っているがよく聞こえない。
まぁ紅葉に何もなくてよかった。あとで紅葉にも説教しないとね。誰彼構わず媚びるなって。
そう考えていると突然痛みが増した。
「ぐぅ。あぁ。」
右腕が全体的にものすごく痛む。
右腕を抑えたままうずくまる。
痛みをごまかそうと上を見上げる。
突然また景色が変わった。
と言うより目覚めた。
夢……だったの?
でも腕はまだ痛む。腕を見て見ると包帯が巻かれていた。両手には手錠?の様なものが付いている。
制服はボロボロ。
周りを見た感じどうやら檻のような所にいるみたい。
あの夢の続き?
でもこの痛みも起きた感覚もやけに現実感がある気がする。夢じゃなかったって事なのかな。こんな事現実に起こるわけないし、夢だと思いたいな。
痛っ。
少し動いたら腕にものすごい痛みが走った。
包帯をとったら乙女の肌が見るも無残になってるんだろうなぁ。
「起きたか?」
声の方を見る。
そこには男が1人立っていた。
背が高くすらーっとしていてタキシード?みたいな服装、シルクハット、黒い手袋に黒革の靴。そして手には杖を持っている。歳は二十代前半だろうか?見た感じ日本人ではない。
「あなたが死にそうなところを助けて治療してくれたの?」
「まぁ治療してやったのは事実だが別に助けてやった訳じゃない。ただ金になると思ったからだ。」
「金?私を雇うってこと?」
「いんや。あんたを奴隷として売り飛ばすって事だ。黒い髪に黒い瞳。なかなか整った顔立ち。まぁ若干幼さは残っているが、マニアにはそれそこ高値で売れるだろう。おまけに変わった服装。これだけ珍しければかなりの値が張るのは間違いないだろうなぁ。」
「そんなっ。奴隷ってこの国で認められてるの!?」
「表では認められちゃいないな。だがこういうのを求めている奴がいるのも事実。」
「最低!ここから出して!」
「おいおいそりゃねぇだろ?俺がいなかったら出欠多量で死ぬか焼け死ぬかしてたんだぞ?」
「死んだほうがよかった!」
死んだらこんな悪夢も冷めるかもしれない。
思えば辛いことしかないじゃん。
突如景色が変わったと思ったら王様っぽい奴に無一文で城から追い出され、何か買うお金も泊まるお金もなく、仕方なく町の外に出たら魔物に襲われ、死にかけたら次は奴隷?
……もう、死にたい。早く楽になりたい。
よく考えたら何も食べてないからお腹すいたし。
「そんな死にたいとか言うなよなぁ。世の中生きたくても生きられない奴だっているんだからさぁ。」
「さっさと死んでこんな悪夢から解放されたい。」
「まぁ夢だと思いたくもなるよなぁ。俺もそう思いたいことあるなぁ。まぁ現実逃避するなって言いたいね。逃げたって何も始まらねぇぞ?」
「夢の中の人は黙ってて!」
「だからこれが現実なんだって。腕の傷だって痛むだろ?鉄の床冷たいだろ?夢でそんな鮮明な感覚あるか?」
「リアルな夢……?」
「……これがいわゆる夢見る少女ってやつか。」
「ちょっと馬鹿にしないでよ!」
「あんたも現実だって分かってんだろ?さっさと認めろっての。じゃないと話が進まねぇ。」
やっぱりこれ現実なのかな?そうだとしたら私魔物に食べられて死んでいたかもしれないのかな?この人は命の恩人になるのかぁ。私を奴隷にしようとしているけど。
「分かってくれた所で本題に入る。あんた、その黒い髪と瞳は生まれつきかい?」
「ん?そうだけど?」
「ってことは勇者の家系で間違いないか?」
「勇者?」
「違うのか?黒い髪に黒い瞳は召喚される勇者の特徴なんだよ。だからその子孫かなんかだと思って助けたんだがな。」
「召喚って何?」
「知らないのか?違う場所にいる特定の誰かを儀式を行う場所に呼び寄せるんだ。勇者の場合は特別な儀式で異世界?から呼び寄せるんだったか?」
「異世界?違う世界ってこと?」
「まぁそうだな今までの勇者達は異世界から来たとか言っていたそうだ。」
「じゃぁ私もその儀式で呼ばれたって事?」
「あんたはこの辺りに住んでる勇者の子孫なんじゃないのかい?勇者を召喚したって話は聞かないし、勇者なら最初に武具と金をある程度与えられるはずだし。」
「私友達と話してたらいきなり景色が変わって金髪でタレ目な王様っぽい奴が目の前にいたのよ?」
「多分それはこの国の王だろうな。それじゃああんたは勇者ってことかい?」
「え?そう……なのかな?」
「自分が勇者である自覚がないのか。まぁこれはこの国の王の責任だろうな。本当馬鹿だなあのクソ王は。」
「勇者ってなにするの?」
「んー。なにも施しをしなかったクソ王に復讐でもすればいいんじゃない?」
「いや、私そんなつもりないし。」
「それはいいけど、それよりあんたさぁ。奴隷になるの嫌だろ?」
「そりゃぁね。」
「なら、俺と一緒に来い。歩き売りとかしてこの世界を旅してまわろうや!今は危なくて旅なんて出来ないが、勇者が一緒なら話が変わる。奴隷になるよりいいと思うが?」
「まぁ、治療してくれた恩もあるし、同行してあげる。世界を旅するのも楽しそうだし。」
「そうと決まればこんな薄暗い所に用はないさっさと行くぞ!」
「え?ちょっとここから出してよ!」
「あぁ忘れてた。ほらよ。」
鍵を開けてくれた。
「ありがとう。」
「早く行くぞ。」
男は私の左手を引く。
「他の奴隷達は?」
「実は俺、奴隷商人でも何でもないんだわ。あんたを治療したってのも嘘。治療はそこで伸びてる本物がやったんじゃないのか?」
男の視線の先を見ると、裸にされて倒れているおじさんがいた。
「あんたが担がれてここに連れて来られるのを見たから気まぐれで助けに入った。」
「そうだったんだ。なんか酷いこと言ったと思うけど、ごめんなさい。」
「まぁ、いいってことよ!俺は自由気ままな旅人、ハルト=ルーヴァンよろしくな!」
「私は芦田桃子。桃子でいいよ。」
「モモコ?変わった名前だな。」
「酷い!そういうハルトこそ変な服装!似合ってない!」
私はこうしてここが現実であると知らされた。
「……え?あ、ごめん聞いてなかった。」
「どうしたの桃?ぼーっとして。」
「ううん!何でもない!大丈夫だよ!」
私は腕を上下させ大丈夫とアピールする。
ここは学校の教室?夕日のせいか教室が淡く暖かい朱色に包まれてるので、あまり現実感がない。
話しかけて来ている、背がちっちゃくてボブがトレンドらしい、おっちょこちょいで天然な性格?ふわふわ天使みたいなこの子は、秋山紅葉。本人曰くおっちょこちょいで天然はきゃらずくり?だそうだ。
「?まぁいいか?それより桃ー。— — —」
「え?何?聞こえないよ?」
「だからー、— — —」
どうしたんだろ?耳が悪くなったの?
そう考えていると、教室が二重、三重にぶれて見え出した。
「え?」
景色が切り替わった?
学校の屋上になってる。
周りには紅葉がいるだけ。
いや、もう1人いる。というか紅葉がもう1人の人と何か話をしているみたい。
私とは距離があるから話の内容はあまり聞こえない。
盗み聞きするつもりはないが、何となく気になったから近寄る。気になるものは仕方ないよね!
「どうして俺と付き合えないんだよ!」
「え?だって、私、付き合うとかよく分からないし……。」
普段の紅葉見てるからぶりっ子しているのがよくわかるな。そしてこれは告白の現場ってやつだな。
「分からないなら俺が教えてやるよ!試しに付き合ってみよう。」
「普通に遊んだり話したりするだけじゃダメなの?」
紅葉はやんわりと断ってるなぁ。
「俺だけのものにしたいんだ!」
ふぅー。男子が紅葉を抱きしめた。
「いやっ。やめて!」
紅葉は男子を剥がし、怯えた目で見る。
「こっちが甘い言葉頑張ってかけてやってんだからなびけよー!」
えー!!!なにそのキレかたー!ありえなくない!?ばかなの!?
すると男子はポケットからカッターを出した。
「ふふ。俺のものにならないなら……。うわぁぁぁ!」
雄叫びをあげ紅葉に切りつけようとする。
「あぶない!」
私は咄嗟に紅葉を突き飛ばした。
「いたっ。」
紅葉がコケた痛みを訴えて私の方を見る。
紅葉が驚いたような顔をしている。
「桃!右手!」
「自分の状況ぐらいわかってるよー。」
紅葉を安心させようとなるべく笑顔で答えた。
男子が持っていたカッターは、私の右腕を切り裂いていた。
痛いには痛いのだが我慢できないほどじゃない。
男子の方に目を向ける。
男子は怯えたように、カッターを手放し、後ずさる。
「あんた振られたからって逆恨みして相手を殺そうとするなんて馬鹿なの!?」
切りつけられた部分を抑えながら言う。
「そんな……。俺は。」
ぶつぶつ何か言っているがよく聞こえない。
まぁ紅葉に何もなくてよかった。あとで紅葉にも説教しないとね。誰彼構わず媚びるなって。
そう考えていると突然痛みが増した。
「ぐぅ。あぁ。」
右腕が全体的にものすごく痛む。
右腕を抑えたままうずくまる。
痛みをごまかそうと上を見上げる。
突然また景色が変わった。
と言うより目覚めた。
夢……だったの?
でも腕はまだ痛む。腕を見て見ると包帯が巻かれていた。両手には手錠?の様なものが付いている。
制服はボロボロ。
周りを見た感じどうやら檻のような所にいるみたい。
あの夢の続き?
でもこの痛みも起きた感覚もやけに現実感がある気がする。夢じゃなかったって事なのかな。こんな事現実に起こるわけないし、夢だと思いたいな。
痛っ。
少し動いたら腕にものすごい痛みが走った。
包帯をとったら乙女の肌が見るも無残になってるんだろうなぁ。
「起きたか?」
声の方を見る。
そこには男が1人立っていた。
背が高くすらーっとしていてタキシード?みたいな服装、シルクハット、黒い手袋に黒革の靴。そして手には杖を持っている。歳は二十代前半だろうか?見た感じ日本人ではない。
「あなたが死にそうなところを助けて治療してくれたの?」
「まぁ治療してやったのは事実だが別に助けてやった訳じゃない。ただ金になると思ったからだ。」
「金?私を雇うってこと?」
「いんや。あんたを奴隷として売り飛ばすって事だ。黒い髪に黒い瞳。なかなか整った顔立ち。まぁ若干幼さは残っているが、マニアにはそれそこ高値で売れるだろう。おまけに変わった服装。これだけ珍しければかなりの値が張るのは間違いないだろうなぁ。」
「そんなっ。奴隷ってこの国で認められてるの!?」
「表では認められちゃいないな。だがこういうのを求めている奴がいるのも事実。」
「最低!ここから出して!」
「おいおいそりゃねぇだろ?俺がいなかったら出欠多量で死ぬか焼け死ぬかしてたんだぞ?」
「死んだほうがよかった!」
死んだらこんな悪夢も冷めるかもしれない。
思えば辛いことしかないじゃん。
突如景色が変わったと思ったら王様っぽい奴に無一文で城から追い出され、何か買うお金も泊まるお金もなく、仕方なく町の外に出たら魔物に襲われ、死にかけたら次は奴隷?
……もう、死にたい。早く楽になりたい。
よく考えたら何も食べてないからお腹すいたし。
「そんな死にたいとか言うなよなぁ。世の中生きたくても生きられない奴だっているんだからさぁ。」
「さっさと死んでこんな悪夢から解放されたい。」
「まぁ夢だと思いたくもなるよなぁ。俺もそう思いたいことあるなぁ。まぁ現実逃避するなって言いたいね。逃げたって何も始まらねぇぞ?」
「夢の中の人は黙ってて!」
「だからこれが現実なんだって。腕の傷だって痛むだろ?鉄の床冷たいだろ?夢でそんな鮮明な感覚あるか?」
「リアルな夢……?」
「……これがいわゆる夢見る少女ってやつか。」
「ちょっと馬鹿にしないでよ!」
「あんたも現実だって分かってんだろ?さっさと認めろっての。じゃないと話が進まねぇ。」
やっぱりこれ現実なのかな?そうだとしたら私魔物に食べられて死んでいたかもしれないのかな?この人は命の恩人になるのかぁ。私を奴隷にしようとしているけど。
「分かってくれた所で本題に入る。あんた、その黒い髪と瞳は生まれつきかい?」
「ん?そうだけど?」
「ってことは勇者の家系で間違いないか?」
「勇者?」
「違うのか?黒い髪に黒い瞳は召喚される勇者の特徴なんだよ。だからその子孫かなんかだと思って助けたんだがな。」
「召喚って何?」
「知らないのか?違う場所にいる特定の誰かを儀式を行う場所に呼び寄せるんだ。勇者の場合は特別な儀式で異世界?から呼び寄せるんだったか?」
「異世界?違う世界ってこと?」
「まぁそうだな今までの勇者達は異世界から来たとか言っていたそうだ。」
「じゃぁ私もその儀式で呼ばれたって事?」
「あんたはこの辺りに住んでる勇者の子孫なんじゃないのかい?勇者を召喚したって話は聞かないし、勇者なら最初に武具と金をある程度与えられるはずだし。」
「私友達と話してたらいきなり景色が変わって金髪でタレ目な王様っぽい奴が目の前にいたのよ?」
「多分それはこの国の王だろうな。それじゃああんたは勇者ってことかい?」
「え?そう……なのかな?」
「自分が勇者である自覚がないのか。まぁこれはこの国の王の責任だろうな。本当馬鹿だなあのクソ王は。」
「勇者ってなにするの?」
「んー。なにも施しをしなかったクソ王に復讐でもすればいいんじゃない?」
「いや、私そんなつもりないし。」
「それはいいけど、それよりあんたさぁ。奴隷になるの嫌だろ?」
「そりゃぁね。」
「なら、俺と一緒に来い。歩き売りとかしてこの世界を旅してまわろうや!今は危なくて旅なんて出来ないが、勇者が一緒なら話が変わる。奴隷になるよりいいと思うが?」
「まぁ、治療してくれた恩もあるし、同行してあげる。世界を旅するのも楽しそうだし。」
「そうと決まればこんな薄暗い所に用はないさっさと行くぞ!」
「え?ちょっとここから出してよ!」
「あぁ忘れてた。ほらよ。」
鍵を開けてくれた。
「ありがとう。」
「早く行くぞ。」
男は私の左手を引く。
「他の奴隷達は?」
「実は俺、奴隷商人でも何でもないんだわ。あんたを治療したってのも嘘。治療はそこで伸びてる本物がやったんじゃないのか?」
男の視線の先を見ると、裸にされて倒れているおじさんがいた。
「あんたが担がれてここに連れて来られるのを見たから気まぐれで助けに入った。」
「そうだったんだ。なんか酷いこと言ったと思うけど、ごめんなさい。」
「まぁ、いいってことよ!俺は自由気ままな旅人、ハルト=ルーヴァンよろしくな!」
「私は芦田桃子。桃子でいいよ。」
「モモコ?変わった名前だな。」
「酷い!そういうハルトこそ変な服装!似合ってない!」
私はこうしてここが現実であると知らされた。