「ケーキ、食わねえの?」
え???
ぱっと顔をあげると、唯一の黒髪っぽい男の子がこっちを見ていた。
切れ長の目にスッとした鼻。
サラッとした前髪。
軽く着崩した制服がそう見せるのか、タメとは思えないくらい大人っぽい。
うわぁー、これまた自分に自信ありそう。
苦手なタイプの彼に、思わず目をそらしてしまう。
「それ…食わねえの?」
「いや、食べるけど…バナナが……」
「バナナ、嫌いなん?」
「うん…」
「……じゃ、俺がもらっていい?」
「…へ!?」
返事を待つことなく、彼はあっという間にケーキを食べてしまった。
は…?何が起こった!?
頭をフル回転させるけど、なにも言葉が見つからなくて。
なんか恥ずかしくなって、うつ向いてしまう。
「俺、ケーキ好きなんだよね」
彼は、左の口角を少し上げて笑った。
そして自分の後頭部をガシガシしながら、「じゃあな」と教室を出て行った。
はぁー??!
ケーキ好きだからって、普通、人の食べかけ食べる?
やばい、はんぱなく軽いわ。
隣町って、チャラ~…

