どうやって家に帰ろうか。
家を飛び出してから何回も頭をよぎる。

彼と付き合い始めてもう3年だ。
いい加減遠慮もなくなるというもの。

だからってあたしのスマホを勝手に見るのは許せない。

やましいことは何も無いけど、あたしにもプライバシーというものがある。

夏の暑い日で、夜でも30度を超えていた。
半袖でも暑い。

せめて財布を持ってきていれば何か買えたんだけど。

勢いで飛び出したせいか、原因のスマホしか持ってきていない。

あたしは悪くない。
だけど待ち受け画面が彼の寝顔の隠し撮りで、少し焦ったのがいけなかった。

そりゃ、誤解するわな。
顔を真っ赤にしてスマホを無理やり取り返した。

はずかしくて暴露できない。
でも誤解されたままは嫌だ。

アホな彼氏でも、あたしの態度は一目瞭然だった。

家の近くの公園で、ブランコに揺られながら眠気を覚ます。

既に日付は変わっていた。

スマホの電源は彼から奪ってすぐに切った。
あの画面がうっかりにでも映し出されてしまわないように。

(消すという選択肢はない。)





30分ほど経って、あたしはそのまま寝てしまっていたようだ。(不用心な!)

彼の背中で目覚めた。

「目ぇ、覚めた?あんなとこで寝るなよ、誰に何されるか分かんないんだぞ」

「…怒ってないの?」

「…忘れた!」
彼はわざとらしくそういった。

気にしてないはずないのに。
そういう彼の優しさが、あたしの心を揺さぶるのだ。

「ごめんね」

浮気なんてしてないから、安心して?
…なんて、素面では言えない性格だから。

「ありがとう」
代わりにぎゅっと抱きついた。

「そういう所、俺は好きだよ」
素直になれないあたしに、素直な気持ちをぶつけてくる。

二人の家に帰って、気まずい雰囲気を吹き飛ばそうと彼は色々と画策した。

優しさにあふれた彼の言動に影響されたのか、あたしもだんだん素直になれていると思う。

スマホの電源を入れると、彼からの不在着信が50件も来ていた。


驚きとその優しさに、涙が出そうだ。

あたしは今なら言えそうな気がして、そっと彼のそばによった。

「あのね、実は…」