それは雨の日。
静かに降る雨の音に耳をすませれば、心地よいリズムが心を踊らせる。
君は隣でうたた寝している。
頭が座っていなくて、それが可愛くて、僕は気持ち悪いくらい一人で笑っていた。
君に会ったのも、こんな雨の日だったね。
君は傘を持っていなくて、でもこんな雨だから何だか走りたくなったって言ってたね。
雨だから走りたくなるってどんな感じなんだろうって、少し不思議だったのを覚えてる。
でも今は、君のそばにいてそれが分かるよ。
君の感性は、僕を驚かせたり、怒らせたり、色んな表情を教えてくれた。
頼むから、バイト帰りの夜道は僕に送らせて。
一人で平気なんて僕のために思わないでほしい。
幸せな時は、とことん幸せ。
そう、この瞬間だって。
そばにいさせて。
そういったのは、君のとんでもない行動に降参した時だったな。
君は知らないよ。きっと。
特別なことなんかない。
ただ季節が、君を見つけてくれた。
あの時二人で見上げた空は、今でも忘れないよ。
夕焼けが、明日まで続いていそうな空だった。
何故か、君を抱きしめたくなって、人目をはばからず抱きしめてしまってたんだよね。
あの時初めて、君が困った顔、でも少し照れた顔をしたんだ。
何気なく笑い合う、そんな日常が、彼女のおかげで特別に変わっていく。
それが一番、愛おしい。
君は知らないかもしれないけど、僕だけが好きだと思っていた時期があったんだ。
不安で仕方なかったけど、君は不器用なだけだったんだって気づいた時、涙が出るくらい嬉しかった。
不器用な優しさを、気づけなくてごめんね。
今なら言える。
君の好きな雨の日が、一番好きだよ。