**珀斗side**

父さんがバイだったとは
さっぱり気付かなかった。

母さんに愛情がないことは
見ていればわかった。

そして、吃驚したのは
父さんが二年前、四ヶ月だけ
僕と同年代の
男の子と暮らしていて
その人は僕と同じ
大学に通っているということ。

話を聞いていると
父さんはその人を
まだ好きなようだったから
僕が探して連れて行くことにした。

復学しているかは分からなかったけど
教授やゼミの先輩達に訊いて回った。

愁聖さんを探しだして早二ヶ月。

夏休み直前となっていた。

そして、やっと見つけた。

「あの、朱雀愁聖さんですよね?」

父さんに見せてもらった
写真は二年前のものだったけど
目の前の彼は
何一つ変わっていなかった。

『そうですけど、どちら様でしょ?』

「東家珀斗。

東家静棋の息子で一年です」

僕が自己紹介すると
彼の目が大きく見開かれた。

『静棋さんの……』

彼があの日、出ていった理由は
僕達を悲しませたくないからだったと
父さんは教えてくれた。

彼は戸惑いと驚きが
綯いませになった
表情(かお)をしている。

僕の勘だけど、愁聖さんも
まだ、父さんのことが
好きなんだと思った。

「もし今日、時間が
ありましたらマンションに来てください」

僕はそれだけ言い残して
愁聖さんと別れた。

僕の勘が当たっていれは
愁聖さんは絶対に来る。

午後八時を少し過ぎた頃
こちらに走ってくる人が見えた。

「来てくれると思ってました」

まだ少々戸惑い気味な
愁聖さんの手を取って
エレベーターに乗った。

合鍵は持っていたけど
あえてチャイムを鳴らした。

玄関が開いて
僕と愁聖さんを認めると
父さんはフリーズした(笑)

そんな父さんに愁聖さんを
半ば押し付ける形で
預けると僕は多分
聞こえてないだろう二人に
帰る旨を伝えて玄関を閉めた。