「まず、俺は伊原を嫌いにならないよ。」



ホッと胸を撫で下ろした。



「あと、俺のことを好きになってくれてありがとう。」



一つずつ、慎重に丁寧に紡がれる言葉。



「でも残念なことに 俺は常に先生じゃないんだ。

家に帰れば、酒とタバコにまみれて自堕落な生活をしているし 部屋だって汚い。


本当、ただのどこにでもいるような駄目人間なんだ。」



「それでも、」



「うん、それでもいいなら 伊原の気持ちに応えたい。」



私は思わず顔を上げて、その人の顔を確認する。



先ほどまでの困った顔とは打って変わって、柔らかく微笑んでいる。



「いいです!全然!そんなところも含めて愛してみせます!」



彼はもう一度、私に向けて その両腕を広げた。


今度は迷いなく、その腕の中に飛び込んだ。



「私、ちゃんと言えて良かった。」



「うん、ちゃんと想いを伝えてくれてありがとう。」



少し早い心の音に、私は顔を上げる。



「もしかして、」



「うるさいよ、そういうことには気付かなくていいからね。」



そう言って 少し顔を赤らめた彼は普段より幼く見えた。