『あれ?小倉どうしたの?』
静かな廊下に響いたその声にビクッとして振り向くと、同期の佐々木くんが真後ろに立っている。
『営業部に用事?』
屈託のない声に、動揺して何も返せない私。
目だけが泳いでしまう。
すると今一番聞きたくない人の声がすぐそばから聞こえた。
『美月...』
名前を呼ばれてゆっくり振り向くと、焦った顔をした彼がそこにいる。
ああ....だめだ。
ここに来てはいけなかったんだ。
『美月、違う』
真剣な顔で私の腕を引く彼に首を横に振る。
それでも彼は私に話しかける。
『美月全部違うよ、ちゃんと話を聞いて』
強く早くなる鼓動に呼吸が追いついていけず、不快感だけが襲ってくる。
ここにいることが嫌で彼の腕をよけ廊下を歩き出すと、すぐに彼に止められた。
『美月!』
強く腕を引かれて足が止まり、そのまま彼の方を向かされる。
彼の真剣な眼差しがまっすぐ向けられ、私の方が視線をそらしてしまう。
『美月、こっち向いて』
その言葉に首を振る。
今視線を合わせるのは無理。
また感情的になってしまうから。
自分の感情をぶつけてはいけないって分かっている。
すると彼は声のトーンを落として言った。
『美月、嫌な思いさせてごめん。菅野のこと、本当に何もないから。気持ちを伝えられたけど、俺にとっては仕事の同僚でしかないのが本当の気持ち。そうハッキリと伝えてある。俺には美月しか愛せないから。それにさっき小川さんが言っていた話は、この前宣伝部との合同飲み会に参加した時にやたら絡んできただけの子で、興味なんて持てない』
そう言うと私の背中に手を回し、彼の腕の中に引き寄せられた。
『俺は美月しか見ていない』
そして私の頭にキスを落とした。
優しくて温かいキス。
ああ...蒼汰は変わってなんかいなかったんだ...。
変わってしまったのは私の方。
私が蒼汰を信じていなかった。
裏切ったのは私。
『ごめんなさい...』
『美月?』
腕から私を少し離して、顔を覗き込んできた。
『私..蒼汰のこと信じていなかった。蒼汰は...蒼汰はいつも私のことを...。それなのに私..』
それ以上言葉にすることができなかった。
涙が次から次へと流れ落ち、呼吸が乱れる。
『大丈夫』
そう耳元でささやきながら背中をさすってくれた。
こんなに優しい人を、私は傷つけた。
私は彼を幸せにしたかったのに、私が彼を不幸にしている。
そのことに気付いて彼を見た。
『ごめんなさい...蒼汰。こんなに大切にしてくれていたのに、私が...私が蒼汰を大切にできていなかった』
『そんなことない、俺はいつだって幸せだよ』
その言葉に首を振って否定する。
『私...できていなかった』
『美月....』
『今の私じゃだめ...』
そう、今のままではだめだと思った。
幸せにしてもらっていたのに、私が幸せにすることができていない。
甘えることしかできていない。
大好きな人を信じることができていない。
あまりに勝手だった自分に失望してしまい、蒼汰に申し訳なく思った。
『ごめんなさい...』
頭を下げた意味を理解した蒼汰は深いため息をつくと、もう一度私を抱きしめて『俺が好きなのは美月だよ』と言うと身体を離して部屋へ戻って行った。
静かな廊下に響いたその声にビクッとして振り向くと、同期の佐々木くんが真後ろに立っている。
『営業部に用事?』
屈託のない声に、動揺して何も返せない私。
目だけが泳いでしまう。
すると今一番聞きたくない人の声がすぐそばから聞こえた。
『美月...』
名前を呼ばれてゆっくり振り向くと、焦った顔をした彼がそこにいる。
ああ....だめだ。
ここに来てはいけなかったんだ。
『美月、違う』
真剣な顔で私の腕を引く彼に首を横に振る。
それでも彼は私に話しかける。
『美月全部違うよ、ちゃんと話を聞いて』
強く早くなる鼓動に呼吸が追いついていけず、不快感だけが襲ってくる。
ここにいることが嫌で彼の腕をよけ廊下を歩き出すと、すぐに彼に止められた。
『美月!』
強く腕を引かれて足が止まり、そのまま彼の方を向かされる。
彼の真剣な眼差しがまっすぐ向けられ、私の方が視線をそらしてしまう。
『美月、こっち向いて』
その言葉に首を振る。
今視線を合わせるのは無理。
また感情的になってしまうから。
自分の感情をぶつけてはいけないって分かっている。
すると彼は声のトーンを落として言った。
『美月、嫌な思いさせてごめん。菅野のこと、本当に何もないから。気持ちを伝えられたけど、俺にとっては仕事の同僚でしかないのが本当の気持ち。そうハッキリと伝えてある。俺には美月しか愛せないから。それにさっき小川さんが言っていた話は、この前宣伝部との合同飲み会に参加した時にやたら絡んできただけの子で、興味なんて持てない』
そう言うと私の背中に手を回し、彼の腕の中に引き寄せられた。
『俺は美月しか見ていない』
そして私の頭にキスを落とした。
優しくて温かいキス。
ああ...蒼汰は変わってなんかいなかったんだ...。
変わってしまったのは私の方。
私が蒼汰を信じていなかった。
裏切ったのは私。
『ごめんなさい...』
『美月?』
腕から私を少し離して、顔を覗き込んできた。
『私..蒼汰のこと信じていなかった。蒼汰は...蒼汰はいつも私のことを...。それなのに私..』
それ以上言葉にすることができなかった。
涙が次から次へと流れ落ち、呼吸が乱れる。
『大丈夫』
そう耳元でささやきながら背中をさすってくれた。
こんなに優しい人を、私は傷つけた。
私は彼を幸せにしたかったのに、私が彼を不幸にしている。
そのことに気付いて彼を見た。
『ごめんなさい...蒼汰。こんなに大切にしてくれていたのに、私が...私が蒼汰を大切にできていなかった』
『そんなことない、俺はいつだって幸せだよ』
その言葉に首を振って否定する。
『私...できていなかった』
『美月....』
『今の私じゃだめ...』
そう、今のままではだめだと思った。
幸せにしてもらっていたのに、私が幸せにすることができていない。
甘えることしかできていない。
大好きな人を信じることができていない。
あまりに勝手だった自分に失望してしまい、蒼汰に申し訳なく思った。
『ごめんなさい...』
頭を下げた意味を理解した蒼汰は深いため息をつくと、もう一度私を抱きしめて『俺が好きなのは美月だよ』と言うと身体を離して部屋へ戻って行った。



