君だけに愛を乞う

『お願い、帰って。私...だめなの。嫌なこといっぱい考えてしまって、蒼汰にひどいことしか言えないし、こんな顔見せたくない』

私の言葉を聞いた彼は、ためらう様な口調で聞いてきた。

『美月....気にしているのは、菅野のことだよな?』

『....』

その名前を聞くのも嫌だった。

ただの嫉妬なのに、上手く表現できない私はとんでもないことを口にした。

『蒼汰には菅野さんだって他の人だっていくらでもいるんだよ。自分がどれだけ人気あるのか分かっているでしょ』

『そんなの関係ないし、興味ない。俺には美月しか必要ない』

その言葉に胸が苦しくなる。

嬉しいはずなのに、苦しい。

今までだって十分なほど大切にしてもらっていたのは分かっているのに、不安がそれを拒絶する。

『いつも誰かが蒼汰を想っている。その想いを無視する程、私は強くなれない。相手を憎んでしまう自分だって嫌。蒼汰にあたってしまうのも嫌なの』

『美月...』

『私は蒼汰を幸せにできない』

ひどい言葉を放った。

自分でもどれだけひどい言葉か分かっている。

それでも出てしまったものは、取り返しができない。

『...それ....本気?』

『....うん』

一変して堅くなった彼の声に、返す声が小さくなる。

『本当にそれが本心なら、顔を見せて直接言って』

怒りの含んだ声に胸が震える。

ゆっくりドアを開けると、見たこともない冷たい表情の彼が私を見つめた。

『美月、本当のこと言って』

彼の顔を見ると言えなかった。

ひどい言葉も、不安だとも。

何とか振り絞って『ごめんね...』そう告げた。

彼は眉間にシワを寄せて苦しそうな顔でしばらく私の顔を見た後、『分かった...』とつぶやいて去っていった。