間違った恋


スタスタと歩く若頭の後をカルガモの如く追いかける私を通りすがる人達は何事かと目をまん丸にして見ていた。

「ちょ、どこまで行くんですか」

現在クラブを出て歩くこと数分。

まさかクラブを出て歩かされるとは想像もしていなかった。

「もう着く」

そう言って歩く足を止めない若頭。

小走り状態ではぐれないように必死について行くことがやっとだった。

「着いたぞ」

足を止めた若頭は一つのビルを見上げた。

一見ボロいビル。

3階建てでちゃんと窓がある。

どこにでもありそうなビル。

「本当にここに居るんですか?」

ちょっと怪しすぎやしませんか?

だってだって何か…

「ヤクザの事務所みたい」

明らかに任侠映画に出てきそうなビルなんだもん!!!

「事務所だからな」

…やっぱり。

平然と言う若頭はスタスタと事務所の階段を上って行ってしまった。

ちょちょ、私も行かねばならないのか?

暫く考え結局追いかけることになったのだが…