だけど相手は一言も発さずに私を睨みつけた。
怖い怖い。
そんなに睨まれる事した覚えがない私はふいっと顔を背けてしまった。
それがいけなかったのだろうか。
相手は私の目の前まで来て無言の威圧をしてきた。
ジリジリと後ろに少しずつ下がっていくと気づけば背中には冷たい壁があって逃げ場を無くした私は棒立ちになっていた。
「な、なんですか…」
自分でも驚くくらい小さい声が出て相手に聞こえたのだろうかと心配してしまう。
「気に入らねえ」
「はい?」
気に入らないってそんな急に言われてもどうしたら良いのか…
「すぐに退きますんで」
私が邪魔ならそう言ってくれればすぐこの場から消えるのに。
目の前に仁王立ちをしている若頭と背中に当たる冷たい壁から逃げ出そうと横に足を向けた時、
「あれはお前に送ったやつだ」
そう呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「あれってブランドコスメですか?」
「ああ、あと金もだ」
「それはありがとうございます。けど私コスメならいっぱいあるのでいりません」
半分嘘で半分本当。
コスメはリップや口紅なら沢山持ってる。
他は…まあほどほどに。
「気に入らなかったのか」
「普通にいらなかっただけです」
ブランドコスメばっかり送ってこられた私の動揺は尋常じゃなかったんだぞ。
心の中で言いたい事を言いまくった。


