間違った恋


クラブの前まで来たはいいけどどうやって入れば良いのか…

入り口付近でウロウロしていると同い年くらいの1組のカップルがクラブから出てきた。

彼女は彼氏の腕に巻き付いていて、今の時期じゃなかったら絶対に暑いよねって心の中で思っていた。

彼女は嬉しそうに彼氏との会話を繰り広げていた。

少しだけ羨ましいって思うのは多分私に彼氏が居ないから。

私だって彼氏欲しいのに…

イケメンで黒髪で二重で高身長な人。

早くどこかにいないかなー。

そんなことを空想しながら入り口前でボーッとしているとクラブの扉がバンっと音を立てて空いた。

ビクッと一瞬身体が跳ねた。

「さっさと引きずりだせ」

その冷たい声に、その冷たい瞳に。

「いやぁぁぁぁぁ!」

女の悲鳴に近い叫びが夜の街に響く。

数人の黒スーツを身にまとっている男達に半ば引きずられるようにしてクラブから出てくる女。

「嫌だ!助けて!!」

女が騒ぎ立て、助けを求めて手を伸ばした先にいたのはー…

あ、私か。

最悪だ。何でこんな場面に出くわすんだろ。

女の手は虚しくも空を仰ぐだけで私には届かなかった。

だけど冷たい瞳にはバッチリ捕らえられた。