身構えて、男が私に近づいてきたので小さい悲鳴を上げてしまう。
キャだかヒイッだかなんとも悲痛な叫びだったと思う。
「“中野”さんですか?」
「…へ?」
さっきは“田島”だろって決めつけられてたから名前を知られていることに対してかなり驚いた。
「先程は大変ご無礼を…お詫びに来たんです」
お詫び…
いらねえ。
「堅気に手を出した以上、上のモンの前で誠意を見せなきゃならんのです」
二人の厳つい男のうちの片方である少し平凡な顔をしている男はいきなり目の前で腰を90度にへし折った。
つられてもう一人のスキンヘッドも腰を90度にへし折ると、
「「すいやせんでした!!」」
とヤクザ顔負けのドスの効いた声で詫びを入れて来た。
…こ、怖い。
震えながら厳つい男二人を見ていると、アパートの階段から降りて来たもう一人の男が姿を現した。
「若!ホシ居ましたぜ」
スキンヘッドはアパートから降りて来た男の事を若と言っていた。
ということは…この人たちはヤクザ?


