「…たぁ…」
思わず尻餅をついてしまった私を見て、厳つい男はニヤニヤと笑いあっていた。
「ならその“田島”じゃねえって証拠見せろ」
威圧的な物言いに縮こまりながら、バックの中に入っていた財布を取り出した。
「お、とうとう利子だけでも返す気になったのか?」
と、なんだか嬉しそうだった。
「これ!」
私はお金ではなく免許証を厳つい男たちに見せつけた。
男たちはマジマジと私の手から奪った免許証を見入ると顔をこれでもかってくらい真っ青にして部屋から飛び出した。
バタバタとアパートの階段を駆け下りる足音に何だか忙しない人たちだなって他人事のように思っていた。
騒然としていて、ふと我に返った時には部屋の中はぐちゃぐちゃにされていた。
玄関に直結しているリビングは男たちが散々暴れまわったせいで酒瓶が割れてるし、ありとあらゆる袋をひっくり返してくれたせいで片付けは大変だった。
唯一の救いは母さんが夜勤だった事。
家具は壊れてないのでそのまま使えたけど、お酒は買ってこないといけないなぁ。
…めんどくさい事してくれたあの厳つい男たちへの怒りが沸々と湧いてきた。
っていうか間違えたなら謝って出ていけよ、なんて心の中で悪態をついて、事の元凶である田島さんを恨んだ。
田島さんは最近引っ越してきた二十代前半の男らしいが一回も会ったことがない。
田島の野郎のせいで私の仕事が増えた。
やらなきゃならない課題だってあるっていうのに。
掃除をし終えた頃には夜の11時。


