間違った恋


DJの音楽に合わせて踊る人たちの中に入って言ったリカコを見届けると、私は端っこにあった椅子に腰かけた。

初めて来るクラブに戸惑いを隠せないのも確かだけど、あの男はなんだったのだろう。

リカコがここに来る前に言っていた事を思い出した。

【二階はVIPルームって言ってね、お金持ちしか入れない所があるの。アタシら庶民は下で踊るのよ。】

そう言ってウインクしていたことを思い出した。

ならさっきの人はお金持ちなのかな。

じゃなかったらこんな所来ないし、VIPルームなんて入れないよね。

さっきの男の事が頭から離れないでいる自分に少し笑えた。

なんで会話もしていない男の事なんて気にかけてるのよ私。

それはきっとあれよアレ。

黒髪二重で見るからに高身長だったからよ。

私の理想にちょっとクリーンヒットしてただけ。

ほんのちょっとね。

椅子に体重を預けて、周りの踊っている人たちを見つめて思う。

年齢層が若い。

私と変わらないくらいの歳の子もいるし、逆にちょっと歳食ってるおばさんもいる。

一貫して言えるのはみんなギャルいし見た目厳ついし。

私は入りにくい場所…とは言えないのか?

もう入っちゃってるけどね。

小さいカバンからスマホを取り出すと、時刻は夜中の1時。

そろそろ帰らなきゃやばいっしょ。

明日1限から授業だよ。

リカコ。