ケルンが屋敷に帰宅するとにわかに周りが騒がしくなった。うん?アリアは首を傾げる。

 たしかケルンって極悪非道の嫌われ者よね?

 しかし屋敷の住人達は活気づいているのだ。皆嬉しくてたまらないといった顔で。
 その筆頭はデュラで、さっきからアリアにどのドレスを着せようかとくるくる走り回っている。

「アリア姫はなんて幸運な方なのでしょう。
ケルン様がアリア姫を夕食に招待なさるなんて〜
あ〜素敵だわ。
やはりこのドレスにしましょう。アリア姫には白いドレスが似合うでしょう」

「ねえ、ケルンってどんな人なの?」

「素敵な方ですわ〜」

「じゃなくて、恋人としてじゃなくて……」

「怖い方ですわ……そう言って欲しいのですか?」

 アリアの手をデュラはぎゅっと握りしめた。アリアはデュラの目をじっと見つめる。
 そう言って欲しい、でも真実が知りたい。

「本当の事はケルン様にお聞きになるといいですわ」

 本当の事?

 「さあアリア姫参りましょうか」

 アリアはきゅっと前を見据えた。