「どうしてそう思えるのですか?この白い髪のせいで、あなただって辛い思いなさってきたはずでしょう……」

 まあ確かにそうだなとクルスは、注がれる温かな紅茶を見ていた。

「嫌なことばかり見てたら、それしか見えなくなるから……かな?」

「綺麗事だわ。嫌な現実は嫌な現実でし
かないのよ!」

クルスは辛い気持ちを抱えても、負けないようにしようなどとは、さらさら思ってなかった。
 そんな信念は暴力にすぎない。頑張っては時に人を深く傷つける。でも同時に思っていた。

「負けないで欲しいんだよね……」

 クルスはリルカの淹れた紅茶をぐいっと飲みほした。きっとリルカが何かをいれた紅茶。
 ぐらりと目眩がする。

「あなたはバカですか……」

 リルカは目を伏せた。