アリアの目にクルスの哀しそうな顔が浮かんだ。白い悪魔……そう呼ばれて
苦しんだクルス。それと同じ境遇の人がいる。

「あんたはどうやって生きてきたの?」

 デュラは瞳を暗くさせ、窓の雪をみつめる。それだけで彼女が決して幸せではなかった事をアリアは理解できた。

「でも私は幸運でした。
だってケルン様にお会いできたのですもの〜」

 デュラはケルンがどんなに素晴らしいか
褒め称えた。普段のアリアなら
やかましいわ!と一蹴する所だったが
そのはしゃぎ方がデュラの苦労を物語っていて、アリアは最後まで黙って話を聞いていた。


「ケルン……は、この国をどうする気なの?」

 デュラの動きがピタリと止まる。

「アリア姫はこの国をどう思いまして?」

 デュラの問にアリアは正直に答えた。

「寒い!」

「ですわよね〜。だからですわ。
まずこの国の兵力を増強します。そして
南のアステルスに攻め込みます。

もしこの北の国が南の国の資源で潤えば
きっとこの髪が白い人間への
くだらない差別もなくなるだろって
ケルン様が……」

 ケルンが……。アリアの生まれた国、アステルスに攻め込むなんて聞き捨てならない事だった。それにそんなに簡単な事ではないだろう。しかし、デュラはそんなの分かっているのではないかと、アリアは思う。

 何か悪いんだろう。この国をがこんなに寒いのが悪いのか。
それとも白い髪で生まれてきた、クルスやデュラが悪いのか。

 話を遮るように、コンコンと扉をノックする音にアリアは現実に戻された。

「デュラ様、ケルン様がお帰りになりました」

「はい分かりました。それではアリア姫
失礼」

 誰もいなくなった部屋でアリアは、立ち尽くした。自分がどうしたらいいのか
アリアは分からない。ただ思うのは
皆を幸せにしたい、その一点だった。