差し出された短刀を前に、アリアは迫りくる死という現実を見つめた。さっきまであんなに暖かく満たされた所にいたのにだ。

 私が死んだらクルスはどうするのだろうか?だいたい、貴族の結婚なんて国や家が決めることだし、クルスは優しかったけど
そんなに傷は大きくないかもしれない。

 でも私は?

 アリアは浮かんだ想いに戸惑った。 
 
 私はどうなんだろう?

 つんつんしていたアリアにクルスは優しくしてくれた。まるで昔からの恋人みたいに
抱きしめてくれた。

 私はなんの為に結婚するんだろう?

 国のため?……違う、もう違う。

 アリアは短刀を首にあてた。デュラは驚いて、短刀を取り返そうとする。

「私はクルスが好き」

 これはアリアが選んだ未来だった。