「樋口はすごいぜ。この前なんてさぁ、図書室で人体解剖の本読んでたんだぜ。俺、ビックリしたよ」


「あれは、先生が筋肉や骨の形も理解しておけって言うから」


「確かに、そういう知識も必要かもしれないけど、なんかそういうのって好きになれないんだよな」


「でも、骨格とか理解してれば、描くときの参考になるわよ」


「なんかさ、そういうの作為的っていうかさ。僕は見えるものを、ただ、ありのままに描くのが一番だと思う」


テクニックを学ぶことは必要なことだと僕も思う。


でもそれは、あくまで表現の手段であって、


それ自体が目的になっていくことに


僕は強い抵抗があった。