ゆらゆらと揺れる感覚を感じていた。
 懐かしい夢を見ていた。
 幼い頃に街中で『かくれんぼ』をして遊んでいた。
 大人に見つかったら負けという何だかよくわからないルールを決めて、街中で探検ごっこ。
 同じ年くらいの子供が数人。
 後をついて回る自分を、いつも手を引いて守ってくれていたのが年長の男の子。
 探検途中に転んで泥だらけになった時も、
『僕が一緒に謝ってあげるから』
と家まで送ってくれたこともあった。
 名前は長かったので覚えられなかったのを覚えている。
 確か、誰かの真似をして略した呼び名で呼んでいた。
 エーサマ?、ビーサマ?、シーサマ??
 泥んこでごめんなさーいと戸口で謝る子供たちに、笑顔で対応してくれた母…久しぶりに母の笑顔を思い出した。
 両親からもらったものは、この身体と形見の剣と名前『アルカディア=リーマ』だけ。
『ディア、名前を大切にしてね』
 幼心に何度か母から言われた言葉を思い出す。
 それを記憶の底で覚えていたから、名前に賞金がついていると聞いて、厭な気持になったんだろう。
 そして、なぜ探しているのかを知りたくなったのだ。
 両親との思い出のあるカルマキルに行こうと思えるほどに・・・。
 遠くの方で、船の蒸気の汽笛の音が聞こえた。
 ゆらゆらと揺れる感覚。
 そうだ、私は船に乗って海を渡っているんだ……。
 そんなことを思いながら身を任せている。
「ディア…」
 自分の名前を呼ぶ声に耳を傾ける。
 不思議と懐かしさを感じる。
 誰?
 呟くと同時に、だんだんと意識がはっきりしてくるのが自分でもわかった。