朝陽の先導で通された部屋に足を踏み入れるなり、紗菜はきょろきょろと室内を見回した。
 畳の上には漫画本が山積みになっており、ごみ箱のそばには空のペットボトル容器がふたつ転がっている。ベッドの脇には畳まれた衣類と開封済みのスナック菓子が置いてあった。小学校からの付き合いと思しき学習机にも雑誌やプリント類が散乱していて、やはりというべきか、本来の目的を果たしていない様子だ。


「紗菜、男の部屋に入り慣れてないだろ」

 壁際に立つ朝陽が興味深そうに紗菜を見ていた。

「どうしてわかるの」
「どう、って」

 おかしそうに朝陽は笑う。

「見ればわかる」


 紗菜が自分から部屋の物に触ることはなかった。紗菜が動くより先に朝陽が本棚の漫画を出しながら、それぞれの作品紹介をはじめたからだった。

 紗菜は少年向けにしては絵柄のきれいなサッカー漫画を選んだ。連載中で四十巻を超えるものと聞かされ本棚に戻そうとしたが、かといって他にこれといったものも選べなくて、結局それを五冊ほど読ませてもらうことにした。