「おれは二回目かな。いや、三回か」

「私だけかな。今年は花火を何回やったって話を、夏になるたびにしている気がする」

 あー、と笑い混じりの声が隣で長く続いた。


「そういやそうだ。毎年言うな。なんでなんだろうな、あれ。っていうかさあ、紗菜。それ新事実。新発見。すげえ」

 子供のように朝陽は興奮している。紗菜のほうが恥ずかしくなる。

「そんな、言うほどのことでは」

「だってさ、毎年言ってるのに、毎年言ってることを意識してなかった」

 本気で褒めているらしい。紗菜は照れくささをごまかそうとした。


「毎年言っていても、去年までのことは結構曖昧になるよね。キャンプみたいな行事と一緒にやったのなら覚えていられるけど」

「うんうん、去年もそのまえもごっちゃになるな。家の近いもの同士でいつもやってるから」



 不自然に会話が途絶えた。
 紗菜にも理由がわかっていた。朝陽の花火が先に消え、紗菜の花火も光をなくした。
 朝陽は次の花火に手を伸ばさない。紗菜の終わった花火を奪うように取り、紗菜の側に置いてあるバケツの水に放った。