ろうそくのほうが先に尽きそうに思えた無数の手持ち花火は、点火のあと色とりどりの光の花を散らし、朝陽と紗菜を楽しませた。
 遠慮がちに火をつけていた紗菜だったが、明るい火花を見ているうちに細かいことは忘れてしまった。
 花火の明るさが互いの顔を照らす。火薬の匂いが懐かしい。


 咳きこんだのを煙にむせているととったのか、朝陽が紗菜の腕を引いた。

「こっち。煙来ないから」

「あ。うん。ありがと」

 しゃがみこんだまま腕を取られて、朝陽のほうによろけたのをどうにか堪えた。ワンピースの裾を花火を持っていないほうの手でそっと伸ばす。
 なんとなく朝陽の視線を感じたものの右隣を確かめるのが怖くて、紗菜は花火の先端に視線を残したまま話を向けた。

「花火するの、今年初めてなんだ」