言われて紗菜は自分の格好を改めて眺めた。膝丈のワンピースタイプの部屋着だった。Tシャツに短パンでなかっただけ救いだった。

「ごめん。お風呂入ったばっかでこんなラフな格好してて」

「それもあるけど、髪が」

「あ、うん。はい」

 学校では片側の耳の下で結わえている髪も、いまはまだ半乾きなのでおろしたままにしている。朝陽がそんな自分をまだ見つめているのに気づいて、紗菜は恥ずかしさに下を向いた。


「あの」

「うん?」

「じろじろ見ないで」

「ダメ?」

「ダメってわけじゃないけど」

「じゃあいいだろ」

「そんな」

 思い切って仰ぎ見た先で、朝陽が片手で口を覆いながらくすくす笑っている。
 住宅街とはいえ、まったく人が通らないわけではない。男の子とふたりでいちゃいちゃしていたなんて噂が流れたらどうしよう、と困り果てていると、やがて笑いが止んだ。


「デート行かないのかって聞いたけどさ」

 こちらがご近所の目を気にしだした途端、急に何を言い出すんだこの人は、と紗菜は気が気でない。

「おれもなんだよね」

「なに?」

「おれもそんな相手、いない」