「おっしゃることの意味がまるでわからないのですが」

「わからなくていい。……っつーか、わかってくれるな」

 きっぱり言い放つ朝陽。

 さっきから朝陽の態度がおかしいのは紗菜にも感じ取れた。しかしわからないものはわからない。心なしか顔が赤らんでみえるけれど、自転車で飛ばしてきたからだろう。わざわざ駆けつけてくれるなんて、本当に感謝だ。などと、この期に及んでそんなことばかり思っていた。


 おれも、となにかを打ち明ける気配に紗菜は朝陽を見上げた。いつも通りの穏やかで誰にでも好まれる優しげな顔つきに戻っていた。

「最初に紗菜に声をかけたのはおれなのに、ってイラついて。たぶん紗菜、手元に課題が足りなくて不安がっているんじゃないかなあと思って」

「ああ、当たってる」

「また当たった」

 子供じみた物言いに紗菜も笑いがこぼれた。場の空気が緩んだ。


「なんかさ」

「え」

「昼と雰囲気が違うね」

 ふっと朝陽が笑いかけてきた。