通じてないと理解したらしい朝陽の行動は早かった。

「あのさ、紗菜のこと言ってんだよ。聞いてる?」

 下から紗菜の顔を覗きこんできた。ある程度の距離を置いてしか見たことのない見知った顔が、考えられないほど近くに急に来た。思わず紗菜は飛びのいた。
 聞いてる、と答えつつも動揺を抑えきれない。顔が熱い。

「それで」
と、なぜか朝陽のほうも紗菜から離れると同時にそっぽを向いた。

「幹仁のヤツ、紗菜が漫画借りてったー、必殺技気になるとかマジかわいいとか、自慢してきて」


 やっぱり紗菜には朝陽の言うことが理解できない。かわいいってどこが? 子供みたいってこと? それのどこが自慢?

 朝陽は横を向いたまま怒ったような顔つきだ。機嫌を損ねるようなことを言っただろうかと、紗菜はいよいよ混乱した。