11月8日、ついに、県の高校駅伝大会の日を迎えた。私は朝5時半に目を覚ました。まだ空は暗くほんの少しだけ明るくなりかけていた。部屋から台所へ向かうと既に母は起きていて、私のお弁当や朝食などを作って待っていてくれた。
「修ちゃん、いよいよだね。無理をしすぎないように頑張ってね」
「うん、頑張るよ!」
「修ちゃん、これ、持っていって。お腹が空いたらバスの中で食べなさい。お母さんもあとで応援に行くからね」
「ありがとう! じゃあ、行ってくるよ!」
私は母が握ってくれたおにぎり2つを鞄の中に入れ、玄関を開けて家を出た。瀬野高校まで自転車で向かった。高校に着いたのは朝6時半前だった。そして、バスに乗り陸上部一同は試合会場へと向かった。バスが瀬野通りから高速手前のインターチェンジのカーブを走っていると、朝日の強い光が私の顔に当たった。そして、高速を走りだし、私は鞄の中から母が握ってくれたおにぎりを取り出した。アルミホイールに包まれたおにぎり2つはそれぞれ明太子とゆかりのおにぎりであり、この時に食べたおにぎりの味は今でも忘れられない。
陸上部のメンバーを乗せたバスは午前8時前に駅伝大会の会場へ着いた。道の駅のような大きな広い駐車場にバスは停まった。バスを降りると、たくさんの他の高校の選手達や駅伝大会の関係者達が大勢いた。ここは、大村競技場からさらに北へ40キロほど離れた、田園風景が広がる田舎町の中だった。私達が駅伝で走るコースは、途中、海沿いの国道も走るようになっており、既に、この町の道路は駅伝大会のために交通規制がされていた。道路上には赤いコーンが並べて置かれてあり、歩道には横幕のテントがいくつも建てられていた。試合会場には瀬野高校の3年生の生徒達と先生達も応援に来てくれていた。橋本店長とその娘さんも応援に来てくれた。そして、紗英の母親も応援に来ていた。紗英の遺影を持っていた。この日は清少紗英の誕生日だった。もし、紗英が生きてれば、彼女はこの日で18歳を迎えるはずだった。私は紗英のアシックスの靴も試合会場に持って来ていた。そして、その靴を持って紗英の母親のところに歩いて向かった。
「佐藤君」
紗英の母親が私に気付いて言った。目が潤んだ様子だった。
「お母さん、約束です。今日、紗英の靴を持ってきました。僕が走り終わるまでは、僕に紗英の靴を持たせてください」
「ありがとう。どうか紗英の分まで頑張ってね。紗英と私は、貴方の走りをここでしっかりと応援するわ!」
「はい! 一生をかけた気持ちで頑張ります!」
私は紗英の靴を持って練習場へと向かった。そして、その靴を常に傍に置きながらウォーミングアップをしていた。
午前10時に女子の駅伝がスタートした。私は彼女達が走る姿を必死で応援した。紗英が走る予定だった5区の5キロは、2年生の後輩の女子が走った。彼女の走りはフォームが安定しており素晴らしかった。夏から秋にかけて順調にタイムを伸ばしてきており、16分ちょうどのタイムで走り切り、区間3位の好記録だった。女子の駅伝が行われている最中に、私は空いている芝生のスペースを見つけ、芝生の上でストレッチを行っていた。1年生の男子の後輩が私のサポートを手伝ってくれた。
「佐藤先輩、先輩らしい走りで頑張ってください! 最後は先輩のスパートに期待してます!」
「ありがとう。なぁ、1つだけお願いがあるんだ。俺のジャージを第一中継所のところに持っていく時、この靴も一緒に持って待っててくれるか?」
「分かりました。清少先輩もきっと佐藤先輩が1番に走ってくるのを待ってますよ!」
「あぁ、頑張る! 紗英、待っててな! 俺、行ってくるよ!」
私は立ち上がり、紗英の靴を右手と左手でそれぞれ片足ずつ持ちながら10秒間ほど目を閉じた。そして、紗英のアシックスの靴を青の袋に入れ、自分のジャージと一緒に後輩に手渡した。
「修ちゃん、いよいよだね。無理をしすぎないように頑張ってね」
「うん、頑張るよ!」
「修ちゃん、これ、持っていって。お腹が空いたらバスの中で食べなさい。お母さんもあとで応援に行くからね」
「ありがとう! じゃあ、行ってくるよ!」
私は母が握ってくれたおにぎり2つを鞄の中に入れ、玄関を開けて家を出た。瀬野高校まで自転車で向かった。高校に着いたのは朝6時半前だった。そして、バスに乗り陸上部一同は試合会場へと向かった。バスが瀬野通りから高速手前のインターチェンジのカーブを走っていると、朝日の強い光が私の顔に当たった。そして、高速を走りだし、私は鞄の中から母が握ってくれたおにぎりを取り出した。アルミホイールに包まれたおにぎり2つはそれぞれ明太子とゆかりのおにぎりであり、この時に食べたおにぎりの味は今でも忘れられない。
陸上部のメンバーを乗せたバスは午前8時前に駅伝大会の会場へ着いた。道の駅のような大きな広い駐車場にバスは停まった。バスを降りると、たくさんの他の高校の選手達や駅伝大会の関係者達が大勢いた。ここは、大村競技場からさらに北へ40キロほど離れた、田園風景が広がる田舎町の中だった。私達が駅伝で走るコースは、途中、海沿いの国道も走るようになっており、既に、この町の道路は駅伝大会のために交通規制がされていた。道路上には赤いコーンが並べて置かれてあり、歩道には横幕のテントがいくつも建てられていた。試合会場には瀬野高校の3年生の生徒達と先生達も応援に来てくれていた。橋本店長とその娘さんも応援に来てくれた。そして、紗英の母親も応援に来ていた。紗英の遺影を持っていた。この日は清少紗英の誕生日だった。もし、紗英が生きてれば、彼女はこの日で18歳を迎えるはずだった。私は紗英のアシックスの靴も試合会場に持って来ていた。そして、その靴を持って紗英の母親のところに歩いて向かった。
「佐藤君」
紗英の母親が私に気付いて言った。目が潤んだ様子だった。
「お母さん、約束です。今日、紗英の靴を持ってきました。僕が走り終わるまでは、僕に紗英の靴を持たせてください」
「ありがとう。どうか紗英の分まで頑張ってね。紗英と私は、貴方の走りをここでしっかりと応援するわ!」
「はい! 一生をかけた気持ちで頑張ります!」
私は紗英の靴を持って練習場へと向かった。そして、その靴を常に傍に置きながらウォーミングアップをしていた。
午前10時に女子の駅伝がスタートした。私は彼女達が走る姿を必死で応援した。紗英が走る予定だった5区の5キロは、2年生の後輩の女子が走った。彼女の走りはフォームが安定しており素晴らしかった。夏から秋にかけて順調にタイムを伸ばしてきており、16分ちょうどのタイムで走り切り、区間3位の好記録だった。女子の駅伝が行われている最中に、私は空いている芝生のスペースを見つけ、芝生の上でストレッチを行っていた。1年生の男子の後輩が私のサポートを手伝ってくれた。
「佐藤先輩、先輩らしい走りで頑張ってください! 最後は先輩のスパートに期待してます!」
「ありがとう。なぁ、1つだけお願いがあるんだ。俺のジャージを第一中継所のところに持っていく時、この靴も一緒に持って待っててくれるか?」
「分かりました。清少先輩もきっと佐藤先輩が1番に走ってくるのを待ってますよ!」
「あぁ、頑張る! 紗英、待っててな! 俺、行ってくるよ!」
私は立ち上がり、紗英の靴を右手と左手でそれぞれ片足ずつ持ちながら10秒間ほど目を閉じた。そして、紗英のアシックスの靴を青の袋に入れ、自分のジャージと一緒に後輩に手渡した。
