「……そうじゃない」

見ると、石堂さんは顔を歪め、辛そうに、そして切ない表情で私を見下ろしていた。

「俺は……結局、マニュアル通りになんてできなかった……本当は、お前のことを報告書に書くたびに、後ろめたくてたまらなかった」

そっと、石堂さんの温かな手が私の頬に触れる。

「初めはまたいつもみたいに長続きしないで辞めていくやつなんだって思ってた。そんなやつに、わざわざ俺の技術を教える必要なんてない、会社のために利用できればそれでいいいって……」

石堂さんのその長い睫毛が下がり、唇を湿らせると言った。

「けど、馬鹿みたいに真っ直ぐで真面目で、一生懸命なお前に……会社のマニュアルなんかじゃなくて、俺の教え方で育ててやりたいって、次第にそう思うようになっていったんだ」

「え……?」

「だから、お前に教えてきたことは、すべて俺の本心だ。会社のマニュアルなんて関係ない」

しばらくの沈黙が訪れた。遠くから街の喧騒がやけに大きく聞こえてくる。

「だから……俺を信じろ」

石堂さんの吸い込まれるようなその瞳が、揺るぎない真実を語っている。

石堂さんの、本心だった……私の勘違いって、思っていいの――?

信じたい。石堂さんを、信じたい――。

今までの人とは違う。私を信じてください。私は前にそう言ったことがある。その時、石堂さんは何も言わずに私を信じてくれた。