何てことだろう。

宗吾は私の勤める高嶺コーポレーションの3代目御曹司。

とんでもない男と、一夜を共にしてしまった。

…枯れた女、三十路、お局。

みんなに怖がられる最悪女だと言う事を、宗吾は知るわけがない。

いや、会社では、ひっつめ髪に、黒縁眼鏡をかけてるから、誰だか分からないだろう。

私はそう自分に言い聞かせ、名刺は手帳の中に、そっと閉まった。

「…ま、雲の上の人。プライベートで二度と会うことはないだろうし、狐につままれたと思うことにしよう」

立ち上がった私は、目を覚ますために、シャワーを浴びに向かった。