《葉瑠side》

腹が立っている筈なのに、無意識に宗吾の背中をトントンと、規則正しく優しく叩く。

すると、心なしか、宗吾の体の力が抜けたように感じた。

それと同時に、私も苛立ちが治まっていく。

しばらく二人はそのままで、静かな時間が過ぎていく。

その時ふと、宗吾に1つの疑問が浮かんできた。

「…宗吾さん」
「…なに?」

「…宗吾さんて、誰かの事、本気で好きになったことありますか?あったら、好きだとか、愛してるとか言ってました?」

私の言葉に、宗吾の体がピクッとなった。

そして、私の横にゴロンとなると、寝転がったまま、私を見た。

「…ないな…相手も、俺自身を好きになったと言うより、俺の権力を好きになった感じで、本気になんてなれなかった」