お母さんと抱き合っているとお母さんの携帯が鳴った。

「お父さんあと15分くらいで帰るって」

「はーい」

お父さんは帰宅する15分前に必ずお母さんに連絡を入れる。

「そういえば杏樹を一人アメリカに残さなかった理由の一つとしてお父さんが杏樹と離れたくなかったからよ」とお母さんは言いながらキッチンに向かった。

「それが一番の理由でしょ」と答えてお母さんの後をついていった。

娘の私が言うのも可笑しいけど、父は私を溺愛している。

それは幼いころから気づいていた。